会社の健康診断で脊柱側弯症と診断され、進行を防ぐための相談にご来院。
【傷病名】
脊柱側弯症 65歳女性
【主訴】
2年前(2017年)の5月、会社の健康診断で脊柱側弯症と診断される。
しかし、本人に疼痛や生活に支障を来たすことが何も無かったため、特別な処置もとらず、そのまま放置していた。
その後、1年以上を経過し、今年の夏に家族より姿勢の傾きを指摘され、背中のラインを見せたところ、あまりにも曲がっていることに家族が驚き、病院受診を促され、整形外科を受診する。XP診断の結果、脊柱側弯症との診断をされるものの、年齢的な理由から手術は勧められず、腰痛があるのであればと鎮痛剤の処方をされるだけで、治療やリハビリ等の施術もなく、普段の生活指導や運動指導もなく、帰らされる。
その後、現在の脊椎の状態よりもさらに進行することを防ぐための手段として何か出来ることはないかという相談のもとご来院。
【初検時の身体の状態】
立位にて背部より視診すると右の肩甲骨は下垂しており、右肩関節から右上腕部は前方に回旋傾向にある。
脊柱の弯曲を背面より視診、触診すると、胸椎~腰椎は左側屈が強く脊椎は右回旋を呈している。
胸椎9番から下部の右の脊柱起立筋及び腰方形筋は後方に膨隆しており、若干の限局性圧痛を認める。
また、仰臥位における左右の脚(下肢)長差は右が約2cm上位であった。
【治療内容と指導管理及び注意事項】
脊柱側弯症の弯曲自体が治療によって変化し、改善するということは無いという前提を説明し、我々の治療によって出来ることは、脊椎の弯曲によって無意識のうちに偏った使い方をして歪んでいる身体の状態(構造、機能、姿勢、日常生活動作等々)を整え、関節の可動域、身体機能の安定性を取り戻すことであるということを理解してもらったうえで治療に入った。
オステオパシーの原則に則り、全身からの統合というマイオゴンの観点から上部Tラインと下部Tラインの極端な変位に対して、骨盤調整から治療に入った。
まずは、胸椎11.12番の力の集合点を境に右肩から左股関節へ向かうクロスラインに掛かる強い張力と捻転力が加わっている右腰方形筋に対し間接法による筋膜リリースを行った。さらに、反対側の左肩から右股関節へ向かうクロスラインには圧縮力が加わっており、拮抗するクロスラインの統合を行った。
次に、強い左側屈右回旋を呈している胸椎及び上部腰椎の横突起に対し、母指球と手掌にてPIRを行い、分節毎の回旋を取り除くように促した。その後、オシレーションにより脊椎全体を統合した。
さらに、強い左側屈の緩和として上部Tラインへのアプローチとして左右の肩甲骨周辺の筋膜リリースも行った。
また、若干の疼痛を訴えていた右腰方形筋に対しては極度の筋膨隆と筋緊張が認められており、この部分に対して、座位及び左側臥位にて間接法及び直接法による筋膜リリースを施した。
【治療経過】
患者様本人には週に1回の通院ペースにて暫くの間、治療を続けて治療経過を見させてもらえるよう促した。
また治療後の身体の状態を毎回、画像撮影させてもらえるようにお願いし、時系列での経過観察をさせてもらえるようにお願いした。
2回目の治療に来てもらった際には治療後の身体の状態が非常に良かったと感じてもらうことが出来、もっと早く来院すれば良かったと安心した様子であった。
また、2回目の治療後の画像を患者様とその家族も一緒に見たところ、身体のラインが明らかに変わってきていることに気が付いてもらえ、このままの状態を維持できればと前向きな声を聞くことが出来た。
【オステオパシー的考察】
脊柱側弯症という物理的にはその変位に対しての修正が不可能な病変に対し、その事実を理解してもらったうえで、現状よりも症状を進行させない為の手段といった患者様からの要望ではあったが、我々の出来ることを上手に説明し、その結果を患者様自身がどのように理解し、身を持って結果に満足してもらえたことにオステオパシーの理念が伝わったと思い、嬉しく思いました。
患者様の身体の状態を的確に診断し、身体が上手く可動したり、機能したり出来るように身体調整し、生活しやすくする為のお手伝いをすることで、患者様自身の身体に本来、備わっている生理機能が正常に働き始め、さらには患者様の運動機能を司る神経伝達機能が活性化し、正常な生活動作が回復できたものと推測できた。
これも、オステオパシーの原理原則に則った診断理論が生んだ結果だと誇らしく思いました。
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関節リウマチ (RA)
【症例の概要】
患者氏名Y.S 女性 年齢 54歳
【来院までの経緯】
平成23年4月、左手関節及び左肘関節の疼痛を訴え来院。当時、患者はラケットを使わずに羽根の付いたボールを
手で打ち合うバレーボールタイプのインディアカというスポーツを行っており、その外傷として治療に来ていた。
症状としては、左手関節及び左肘関節に腫脹、熱感といった炎症症状が認められた。
その後、週に1~2回の通院頻度で継続的な身体調整と局所的な治療を施し、炎症は緩和し、一時的には良化するものの再度、インディアカを再開すると特別な受傷機転もなく同様に左手関節及び左肘関節の炎症を伴った疼痛を再発するようになった。
平成24年1月、左手関節及び左肘関節の炎症を伴った疼痛は一進一退を呈し、疼痛出現に至る関節可動域が徐々に悪化してきている傾向が見受けられたので、関節リウマチの可能性を危惧し、朝のこわばりと左右対称性の関節痛の有無を毎回確認したが、その兆候は認められなかった。本人には念の為、内科でのリウマチ検査を一度行うように説明し、受診したものの、リウマチ検査は陰性との診断結果であった。
その後も、週に1~2回の通院頻度で身体調整の継続治療を施し、さらに本人からの意向により当院での鍼灸治療も併用しながら経過観察を行った。
平成27年9月、別の総合病院のリウマチ科にて専門医の診断により、リウマチ診断のスコアリングとは別途の診断にて関節リウマチと診断され、RA専門の投薬治療が始まり、定期的なRA検診を行うこととなった。
【身体の状態:平成27年11月 ~】
平成23年当初の左手関節及び左肘関節に限局した炎症を伴った疼痛症状は、徐々に悪化の一途を辿っている傾向は否めないものの、その進行度合いは6年を経過した現在まで非常に緩やかである。趣味であったスポーツのインディアカは現在、中止しているものの、その他の日常生活や仕事に関しては、なんとか継続出来ている。
また関節リウマチ特有の関節の変形及び筋肉の硬直、腱靭帯の断裂や損傷も全く見受けられず、関節組織や軟骨の 破壊が始まっているような所見は認められなかった。
【治療内容及び経過】
平成27年9月のリウマチ診断を受けた後、RAの継続的な検診及び投薬治療と同時に当院での全身治療である身体調整及び鍼灸治療を継続したい旨を、患者本人からRA専門の主治医に申し出たところ、主治医が快く了承していただき、このまま継続的な治療が行えることとなった。
その後、時折、投薬の副作用からか精神的なストレスなのか、胃の調子が悪く、気持ち悪さを訴える日が多くなった。上記のことを考慮し、身体調整の内容としてはオステオパシーの原則に従い、全身の体液循環の促進と自律神経の バランス調整、及び投薬による肝臓の負担も考慮し、肝臓機能の向上の為の肝臓ポンプ治療や横隔膜の調整といった体腔内圧を考慮した内臓治療を施した。
また、四肢末端の血行障害による冷えや頸肩部の張り感や凝りが気になる日が多くなってきており、血行改善の鍼灸治療も毎回行いながら経過を観察していき、定期的なRA検査の結果も良くなってきており、主治医からも我々の 治療に対し、称賛の言葉もいただけた。
【オステオパシー的考察】
本症例である自己免疫疾患とは本来、我々の身体を守るべき免疫機能が逆に我々の身体を攻撃してしまうといった誤作動を起こす症状である。1度発病したら長く付き合っていかなければならない病気であり、この疾患に対し、オステオパスは何が出来るのであろうかと悩みました。
オステオパシーの原則である「身体は自然治癒力を持つ」といった自然治癒力を免疫力と重ねて考えた場合、生命力の強化の為の治療及び指導を行うことで、その免疫力がさらに身体を攻撃してしまうということを考えると、我々が施す治療は症状を悪化させてしまうのではないかということを真剣に危惧しました。
しかし今回の主治医であるRA専門の医師より局所治療である投薬だけでなく、我々のような東洋医学的な全身治療も必要だという前向きな意見をいただき、我々の役割を再認識することが出来たような気がしました。
患者さん自身に本疾患を正しく理解してもらうことが重要であり、日常生活の中でいかにこの症状を悪化させずに、日々の生活の質を保っていく為の治療及び指導を行っていこうと考えました。
【患者様向け指導管理及び注意事項】
本症例である関節リウマチは適度な運動を毎日継続していくことが大切であり、安静にし過ぎれば関節は固まってしまい、また過度に運動してしまうと炎症が増し症状が悪化してしまうので、運動と安静のバランスが重要である。
また、関節リウマチには健常者よりも疲れやすかったりする傾向があり、だるさや倦怠感が出るということを周囲の人や家族、職場の人に理解してもらうということが、本人の生活の質を保つ為に重要であるということを説明する必要があると思いました。
【本症例に関するコメント】
今回の症例の経過観察を行う過程において、どの時点からまた何をきっかけに自己免疫機能は誤作動を起こし始め、
このような自己免疫疾患というものが発病してしまうのだろうかということを色々と考えました。
私なりに今回の患者に対し、今日までの身体に関する病歴、薬品の内服歴、生活環境、家庭環境、職場環境等々、
様々な要因を問診した結果、1つ気に掛ったことがありました。それは、薬品の内服歴でした。この患者は離婚歴も
あり、現在は再婚者との生活を送っており、過去には様々な精神的なストレスを感じた場面において、眠れなければ
睡眠薬、さらには安定剤、身体の疼痛に関しては即座に鎮痛剤といった薬品依存の傾向があり、この傾向は現在も
続いているということを、今回の関節リウマチの罹患後に初めて本人より聞くことが出来ました。これらの薬品依存
が免疫機能誤作動の誘発要因となったのではないかと私個人的には思っています。
私の主観的な考え方ですが、薬品の処方に関しては医師の指示に基づくものであり、我々が軽はずみに止める指導は出来ないということは承知しております。
しかし、本症例以外でも薬品の継続的な内服が影響して、思いもよらぬ 病気に罹患し、難治の症状に苦しんでいる患者を何人も目の当たりにしています。
薬品の投与は人間の身体において決して望ましいことではないということを根底に置き、オステオパシーの原則に則ったものの考え方を今後も念頭に入れ、たくさんの患者様を救えるオステオパスとなれるように精進していきたいと思いました。
ウィルソン病
【症例の概要】
患者氏名 A.S 女性 年齢 49歳
【来院までの経緯】
平成27年6月、仕事中に気分が悪くなり、早退、欠勤が増え、心療内科を受診し「適応障害」と診断され、投薬による治療が始まる。その後も症状は良くならず、いくつかの心療内科を転院するも、同様に「適応障害」の診断により薬の量も増し、投薬治療が継続される。
平成27年12月、投薬治療も半年が過ぎ、車の運転にふらつきやハンドル操作の異変が見られるようになる。
この頃から、次第に歩行も“すり足”になり、よちよち歩きとなる。全般的に行動が極端に遅くなり、喋り方にも変化が出始める。
平成28年3月、平衡感覚に異変が出始め、歩行が困難となる。さらに、スーパーの駐車場で歩行時に転倒し後頭部を強打し脳震盪を起こす。この日を境に、車の運転を中止する。
平成28年5月、食事、トイレ、入浴等の生活全般に介護が必要となり、ほぼ寝たきりとなる。外出時は車椅子を使用する。その後、背中、首、肩の痛みを訴えるようになり、さらに「適応障害」に躁鬱が重なり、苦しみ始める。
【主訴】
- 平成28年6月30日、首、肩の痛みを訴え、来院する。
- 平成28年7月27日、群大病院での検査結果より「ウイルソン病」と診断される。
【ウイルソン病とは】
ウイルソン病とは微量栄養素である銅の代謝障害により肝臓、脳、腎臓、眼などが冒される疾患です。 食事中の銅は、十二指腸や小腸上部で吸収され、肝臓に運ばれます。肝臓にて、銅は、セルロプラスミンという銅結合蛋白質となり、血液中に流れて行きます。また、脳や骨髄など全身の諸臓器に必要量が分布し、過剰な銅は肝臓から胆汁中に排泄 され、平衡を保っています。しかし、ウイルソン病では、この肝臓での銅代謝が障害され、肝臓中の銅がセルロプラスミンと結合出来ないことから胆汁中へ銅が排泄されず、肝臓に貯まっていきます。そして肝臓からあふれて血液中へ流れ出た銅が、脳・角膜・腎臓などへ蓄積します。また肝臓や脳に銅の蓄積が起こると、肝硬変になったり、脳の障害によって、両手を羽ばたくような振戦(羽ばたき振戦)が起こったり、バランスがとれなくなったり、あるいは筋肉の緊張が高まって手足が固くなる(筋固縮)などの症状が現れます。さらに眼の角膜周囲にカイザーフライシャー 角膜輪といって銅の沈着のため、角膜辺縁に灰色のリングが見える特徴的な所見が認められることもあります。
【身体の状態 ; 平成28年6月30日 ~】
車椅子の座位状態での姿勢保持で強い筋緊張を誘発する傾向があるようで、特に頭の位置を保持する為、頸部に強いストレスを感じてしまい短時間しか座位ではいられない。最もリラックス出来る肢位は頸椎前弯部(C4.5.6)後面及び膝窩部へ小さま枕を当てた状態での仰臥位であり、施術はこの肢位にてのみ行うことが可能である。
四肢には強い筋固縮が認められ、特に上肢では肘関節伸展位、下肢では足関節底屈位を呈しており、他動的にも関節の屈伸運動は困難である。さらに右まぶたのみ開眼しており、左まぶたは閉じた状態を呈していることが多い。
全身でみると左半身に強い筋固縮が顕著に認められる。
体調不良の時や気温、湿度等の外部環境要因からの強いストレスを感じている時は表情も険しく、呼吸も荒くなり、特に胸鎖乳突筋の筋緊張が顕著に現れ、羽ばたき振戦も激しく現れる。
【オステオパシー的考察】
患者のご家族の方への問診で肝機能障害は昔からあったとの話があり、群大病院での血液検査の結果から 肝硬変も認められており、脳障害の症状からの羽ばたき振戦、さらに角膜輪への銅沈着が認められ、ウイルソン病との診断(平成28年7月27日)となったようである。
初回来院時の段階ではウイルソン病の診断は出ておらず、本人からの主訴は頸肩部の痛みであった。
初検時の印象としては、以前、来院したことのあるパーキンソン病の患者と同様の症状が見受けられるところから、脳から出る運動指令が筋肉に伝わらなくなり、運動機能が働きづらくなっているものと考え、この神経障害のメカニズムの中の軸索輸送のプロセスを阻害している要因を排除することを目的とした治療を考察した。まず神経の細胞体にかかる力学的な圧縮を取り除き、神経の細胞体と軸索間の物質移動を促し神経伝達がスムーズに行われるように心掛けた。これにより筋固縮が緩解し、スムーズな生活動作を取り戻すことを目的として治療を行った。
さらに体調の良い日(ストレスの感知が敏感でない日)に限り、肝機能の機能改善を目的とした肝臓ポンプの マニピュレーションも行った。
【治療内容及び経過】
治療を行うにあたり、患者自身が最もストレスを感じない状態を作ることを最優先に考え、治療肢位を様々に変化させて筋緊張の度合いを試し、患者本人にも体勢的に辛いかどうかを確認し、一番リラックス出来る肢位にて治療を行うように心掛け、仰臥位にて膝窩と頸部に枕をいれた状態が最もリラックス出来る肢位であることが分かった。
その肢位にて、まず、副交感神経優位に働きかけるために後頭窩リリースから入り、全身の筋緊張を解放させるよう促した。次に、頸肩部の筋緊張の解放と腕神経叢の神経伝達をスムーズにすることを念頭に、胸郭入口及び出口周辺の筋膜リリースを行った。これは、胸郭上口に於ける骨格構造並びに血管分布、神経走行を考慮し、特に胸鎖乳突筋の支配神経である頸神経及び副神経さらには腕神経叢へのアプローチを念頭にいれ、左右の胸郭上口の前後屈テスト、左右の側屈テスト、左右の回旋テストを行った。このテストにおいて、可動制限に左右差は特に見受けられず、全体的な筋固縮に対するリリースを目的として、強いバリアに対してストレスを加え、制限ギリギリのところで保持しながら、患者に深呼吸を促してクリープを待った。その後、同様にクリープによる筋固縮のリリースを上肢(特に肩関節、肘関節、手関節)、下肢(股関節、足関節)と運動制限の強い関節を狙って行った。
この時に、患者自身がストレスのかからない肢位で施術が進むにつれ、筋固縮がリリースすると共に表情も穏やかになり、振戦も消失することが確認できた。また施術中に気が付いたことであるが、強いバリアに 対してのストレスを過度に加え過ぎると、逆に振戦が増してくることも確認できた。これは過度のストレスを脳が感知した際に、主な諸症状である振戦、筋固縮をさらに強くしてしまうということの証明であり、この治療のポイントはバリアに対して制限ギリギリのストレスでクリープを促すという部分が非常に重要であるということが認識できた。
【患者様向け指導管理及び注意事項】
本症例には患者自身が日々の生活環境の中でどのような要因にストレスを感じてしまうのかを患者自身とご家族の方々も意識して検証してもらい、出来るだけストレスを回避出来るように指導した。
【本症例に関するコメント】
今回の来院までの経緯を時系列で事細かに患者家族から聞くにあたり、心療内科処方の投薬治療に関してのリスクを真っ先に危惧した。約1年間で症状はどんどん悪化し、介護が必要なところまで進行し、最終的には難病指定のこの病気が発覚した訳ではあるが、発覚までの投薬治療の過程になんらかの誘発要因があったのではないかと思ってしまった。
しかし、この難病指定の病気に対しても、その症状である筋固縮は緩解し、振戦も一時的ではあるが完全に消失させることが出来た。この結果から患者自身、さらに患者のご家族からも絶大なる信頼を獲得することが出来、患者の笑顔を目の当たりにすることが出来たことに最高の喜びを感じた。
このようなオステオパシー治療の優位性をさらに検証していくことを今後の目標にしていきたいと思います。
パーキンソン病
- 患者氏名 Y.T 女性 年齢 72歳
- パーキンソン病
⇒ (主訴) 手が震え、普段の姿勢で頸部が右斜め前方に傾いていることを家族に指摘され、その姿勢を自ら 正すことが出来ない。歩行時も足がスムーズに運ばない。姿勢保持も不安定。
- 平成27年4月頃に軽い脳梗塞を発症し、脳神経外科にて脳内CT及びMRI検査にてパーキンソン病と診断される。
- (既往歴)
⇒ MRI診断により、頸椎C3及び腰椎L5すべり症の既往を認めるが、特に疼痛もなく症状は見受けられない。
- (身体の状態)
⇒ 身体の左半身に強い筋固縮が認められる。特に左の胸鎖乳突筋の筋緊張が著明で頸部右側屈右回旋を呈し、立位では前かがみの姿勢となってしまい、姿勢反射障害を認める。
- (治療内容及び経過)
⇒ 胸郭上口における骨格構造並びに血管分布、神経走行を考慮し、特に胸鎖乳突筋の支配神経である頸神経 及び副神経さらには腕神経叢へのアプローチを念頭にいれ、左右の胸郭上口の前後屈テスト、左右の側屈 テスト、左右の回旋テストを行った。左屈曲(前屈)、左側屈、左回旋の強いバリアに対してストレスを加え、制限ギリギリのところで保持しながら、患者に深呼吸を促してクリープを待った。さらに迷走神経、横隔 神経への抑制も意識しながら胸鎖乳突筋のリリースを促した。治療後、仰臥位においては左頸部の筋膜は 緩解し、左右対称的な状態になったものの、立位になると頸部は元の右側屈、右回旋に若干戻ってしまった。
- (オステオパシー的考察)
⇒ パーキンソン病とは脳から出る運動指令が筋肉に伝わらなくなり、運動機能が働きづらくなる病気である。 この神経障害のメカニズムの中の軸索輸送のプロセスを阻害している要因を排除することを目的とした治療を考察した。まず神経の細胞体にかかる力学的な圧縮を取り除き、神経の細胞体と軸索間の物質移動を促し神経伝達がスムーズに行われるように心掛けた。これにより筋固縮が緩解し、スムーズな生活動作を取り 戻すことを主眼に治療を行った。
- (患者様向け指導管理及び注意事項)
⇒ 本症例には振戦、歩行困難、動作緩慢、筋固縮といった四大症状があることを、患者本人とその家族の方にきちんと理解してもらい、ご家族の方は病気を冷静に受け止め、パーキンソン病に関する具体的な知識を 身につけ、適切なサポートをしてもらえるように指導した。さらに日常生活動作においても次第に出来なくなってきていることが多くなることに対して、叱ったり笑ったりといった精神的なストレスを与えないように家族に注意を促した。さらに我々が行う治療だけでなく、患者本人が積極的に身体を動かし、今以上の 身体機能の衰えが進まないように頑張り続けるように患者本人にも指導した。
- (本症例に関するコメント)
⇒ 日々、日常生活動作が出来なくなってくる自分自身の身体に対し、不安と動揺で苛まれていたところに家族からの一方的な指摘を受け、どうすることも出来なくなり来院してきた患者に対し、この病気の諸症状を 説明し理解してもらい、治療を行った結果、一時的ではあるものの身体機能の改善を目の当たりにすることが出来た。今回の神経細胞に対するアプローチというものが現実的に行えるオステオパシーの優位性を実感することが出来た、素晴らしい治療経験となった一症例でした。
頻尿
【症例の概要】
患者: 11歳 男子小学6年生
主訴: 週に3~4回のバスケットボールの練習からのオスグッドの治療で来院
経過: 電療及び手技療法の30分程度の間に3回の尿意を催し、トイレに向かう
この状況が連日続き、頻尿の治療を行い始める。
【問診所見】
- 本人にトイレに行きたくなる症状を聞くと、尿意は催すものの毎回の排尿は無い。
- どのような場面で尿意を催すのかを本人に聞くと、自宅ではそれほどなく時々、学校ではある。
- 緊張しているのかを本人に問うと、緊張している認識もなく、緊張しているような 傾向も特別、見受けられない。
- 本人自体は頻尿だという認識はなく、母親に頻尿に関してのことを聞いても、何ら問題視しておらず、普段も頻尿は無いと母親は答えた。
- 当初の主訴であるオスグッドの症状は1週間ほどで改善し、炎症症状も消え、通常通りのバスケットボールの練習は出来るまでに至っているが、痛みに対しての不安 から継続通院している。
【生活環境要因】
- 1人親の家庭で母親と2人暮らしである。
- 来院時にも親子での小競り合い的な口喧嘩が耐えない。
【理学的所見】
- 立位、座位ともに前傾姿勢が顕著で、姿勢もうつむき加減で表情もどことなく元気がない。
- 背部に強い緊張があり、セントラルアーチ付近に強い後彎が感じられた。
- 腰椎は胸腰椎移行部付近に圧縮間が感じられた
- 歩行時に仙腸関節及び左右股関節に運動制限があり、重心が右に荷重が偏っている。
【治療経過】
《初検時~1週間 ; 通院頻度 ⇒ 2日に1度》
- 臥位の時点で力が抜けていない傾向が強かった為、頸部から抑制技法により副交感 神経に働きかけるような治療に専念し、終始、話しかけながらリラックスするように促した。
- 交感神経過緊張からの横隔膜の動きに制限が感じられ、呼吸も浅くなっている傾向があるので肋間筋及び横隔膜のリリースを図り、呼吸運動の改善と腹腔、胸腔のバランスを整えた。
- 排尿のオステオパシーセンター集合センターであるL2-3への働きかけとともに腰椎の圧着を開放した。
- さらに頻尿の治療に有効な正中臍索へのアプローチとして、恥骨結合と臍の間の白線に沿ってリリースを促した。
【考察】
- 頻尿の原因として物理的な膀胱への圧迫を取り除く力学的な考察からの治療方針と生活環境等からの精神面の緊張が原因で交感神経優位になり、膀胱が無意識に収縮し尿意を催すことを想定した自律神経アプローチを考慮した治療の両面から考察した。膀胱と尿膜をつなぐ管である尿膜管の名残である正中臍索は骨盤の筋膜と横隔膜を 連結する部分であり、この正中臍索の緊張は膀胱の圧迫に繋がり、尿意を催す原因となったとも考えられる。
脊椎のセントラルアーチ及びダブルアーチが硬くなり、体腔内圧のバランスが崩れ、横隔膜の緊張度は増したものと考えられる。さらに内臓神経反射が障害され、各臓器への血液循環が障害された可能性も考慮に入れ、A-Pライン、P-Aラインの力学線及びセントラルアーチ及びダブルアーチの改善を図った。また内臓の機能低下を防ぐ為、血流低下を起こさせないように血管運動のセンター(表層D2~D4、深層D4~D6)、さらには内蔵循環のセンター(D6~D12)に抑制の技法を施した。
- 2週間で計6回の治療により、脱力が上手に出来るようになり、表情も明るくなり、元気になってきた。これに伴い、横隔膜の緊張が解け、体腔内圧のバランスが整い、呼吸が安定してきた。さらに、セントラルアーチが安定し、姿勢がよくなってきた。この時期から気が付けば、尿意を催し、トイレに行きたいという言葉は無くなっていた。
片頭痛
【症例の概要】
患者:60歳女性
主訴 片頭痛、肩こり、右頸部痛
現病歴 慢性的な片頭痛、低体温症、冷え症、肩こり症
職業 スポーツ用品メーカー社員管理職
※具体的な業務内容⇒ミシンを使った刺繍、縫製/商談/パソコン業務
習慣 一日10本前後の喫煙
【理学的所見】
- 立位、座位ともに前傾姿勢が顕著であり、胸椎の後彎が強い。
- 右肩甲骨周辺(C7~D6)部においての膨隆を認め、腹臥位では右菱形筋を中心とし右肩甲骨周辺の隆起を顕著に確認できるが、右菱形筋及び右僧帽筋にはそれほど強い筋収縮は感じられない。さらに右肩関節に運動制限が見受けられ、肩関節の牽引技法時に筋肉反射が不自然に起こる傾向(抵抗反応を示す)が見受けられる。
- 頸部は右後頭窩及び右頸胸連結部に圧縮が感じられ、前後屈制限が見られる。
- 開口時、口角が右側のみ下がり、喋っている際に顕著に現れる。
- 腰椎部は典型的な右側屈、左回旋の傾向が見られ、座位、立位ともに後方重心が顕著に見受けられる。
【治療経過】
《初検時~1週間;通院頻度⇒2日に1度》
- 初検から最初の1週間は患者の体質、性格、特性、自覚症状、他覚的所見を把握する為、検査目的主体の様々な技法を少しずつ試みた。その中で身体の反応及び変化を診ながら、その患者に最も適した技法を確認しながら治療を行った。
- 抑制技法を主体とした身体調整を行い、さらに左右肩関節部、頸部、頭蓋部に限局した抑制技法を加えていった。
- 三叉神経作用による頭痛への対処として蝶形骨の調整を目的としたSBSへの抑制技法、前頭骨リフトによる鞍隔膜の抑制技法を行った。
《1週間後~1ヶ月;通院頻度⇒週に2度》
- 日に日に表情は明るくなり、頭痛、肩こりは軽減し、肩関節の動きも柔軟性が回復してきた。
- 経過観察をする中で呼吸が浅く、力が抜きづらい傾向がある為、横隔膜の運動改善を図った。
- 右肩周辺の肩こりを含む自覚症状は軽減してきたものの、以前として右肩甲骨周辺の膨隆は解消されていないことから、頭痛とも関連性のある肝臓に焦点を絞った治療を付加した。
- 代償的に障害を受けている部分の原因となっている可能性のある部分へのアプローチとして、A-PラインP-Aライン及び脊椎のダブルアーチの減圧を意識した身体調整を行った。さらに上肢のリンパ排液を重点的に行った。
《1ヶ月~;通院頻度⇒週に1度》
- 頭痛はすっかり消え、下部頚椎及び上部胸椎の緊張も緩和されてきた。
- 以前よりも力は抜けるようになったが、若干、筋収縮の反射に不自然さは残る。
- 横隔膜の緊張度も低下し、上手く出来なかった吸気、呼気のリズムがスムーズになってきた。
- 何よりも会話の内容が前向きになり、仕事への意欲や家族との営みを積極的に楽しもうとしている様子が伺えるようになってきた。
- 治療を始め、約1ヶ月が経過したこの時点で、昔から「C型肝炎」で、現在も治療通院中であることを突然告白される。さらに、直前の血液検査の結果で肝機能の状態を判断するのに最も重要な目安となる「血小板数」「ALT(GPT)※肝臓細胞に含まれる酵素」の数値が突如として良化し、執刀医のドクターに「何を始めたのか」と聞かれたことを打ち明けられた。
【考察】
頭痛には様々な種類があり、鑑別診断が大変重要になります。
問診の内容から“頭痛持ちの頭痛”と言われている1次性頭痛の中の「片頭痛」であることは想定出来たのだが、その症状は何が原因で起こっているのかをまず考えた。患者の日常生活の話を伺い、仕事、家事、関白なご主人のケアと本人の抱えているものが多く、肉体的にも疲労困憊であることは感じられた。さらに職場、家庭内での置かれている立場や責任の度合いによる精神的なストレスを抱えていることも感じられた。これらの様々なストレス下において、身体が起こす反応として交感神経の過緊張及び反射障害からの筋緊張が考えられ、これらを解消させる為に抑制技法主体の身体調整から治療に入った。
具体的な仕事内容を伺い、椅子に座った状態での刺繍縫製のミシン作業を長年に渡って大量にこなしており、その姿勢の継続から骨盤部の右側屈、左回旋の典型的な後方重心が形成されたものと思われる。
これらの重心線の乱れから、脊椎のセントラルアーチ及びダブルアーチが硬くなり、体腔内圧のバランスが崩れ、横隔膜の緊張度は増したものと考えられる。
さらに内臓神経反射が障害され、各臓器への血液循環が障害された可能性も考慮に入れ、A-Pライン、P-Aラインの力学線及びセントラルアーチ及びダブルアーチの改善を図った。また内臓の機能低下を防ぐ為、血流低下を起こさせないように血管運動のセンター(表層D2~D4、深層D4~D6)、さらには内蔵循環のセンター(D6~D12)に抑制の技法を施した。また、頭痛との関連性が深いと考えられている肝臓のセンターであるD5~D10(主としてD8~D10)にもヒルトンの法則に則り、アプローチした。
頭痛に限局した治療として、後頭窩、上部頚椎(横隔膜のセンターであるC3~5)、右頸胸連結部のリリースを行い、頭頂部及び側頭部の縫合に沿って抑制の技法を加え、ヘッドの法則に則り、頭蓋の表層の神経を通じ、深部の脳内血管の収縮を促した。三叉神経作用による頭痛への対処として蝶形骨の調整を目的としたSBSへの抑制技法、前頭骨リフトによる鞍隔膜の抑制技法を加え、さらなるP-Aラインの再構築とともに蝶形骨の安定を図った。これらは冷え性を解消する上で体温調節中枢を司っている視床下部への負担軽減をも兼ねることも出来るのではないかと考えた。
右肩関節の機能障害への治療として上肢帯の技法を左右丹念に行い、リンパ排液機能の回復、肩鎖関節、胸鎖関節、肩関節の緩解を図った。さらに肋間筋のリリースと横隔膜の調整技法とともに肝臓、脾臓にもマニュピュレーションを加えた。
本症例での治療方針としては力学的な協調性、液体の流動性、神経系の正常な統合と反射、血管運動センターとの関わりといったことを考慮して治療プランを考えました。様々な要因が幾重にも重なり合って、病変がつくられ、症状として現れているのだという考えをクラシカルオステオパシーから学び、さらに様々な角度から考察し、様々なアプローチ方法によって経過と反応を観察しながら、その患者1人1人が元気を取り戻せるように導いてあげることが最も大切であるとクラシカルオステオパシーから教えていただきました。また障害を受けている部分、又は症状として現れている部分にはそれらの原因となっている要因が別のところに潜んでいる可能性があるという考え方もクラシカルオステオパシーを学ぶことによって養われた気がします。
本症例を題材とさせていただいた経緯は、初検時から患者さんをよく観察し、よく話を聞き、様々な観点から考察し、最も適したアプローチ方法をその都度、考えて症状緩和まで導いたと思った後、“とあるタイミング”で患者自身が長年抱えていた「C型肝炎」罹患の話を打ち明けられたことがきっかけでした。
「C型肝炎」を治すことが出来る訳でもなく、進行を遅らせることが出来る訳でもないことは患者にも説明しました。また血液検査の結果で肝機能の状態を判断するのに最も重要な目安となる「血小板数」「ALT(GPT)」の数値が良化したことも、検査結果のデータ表を拝見させていただきましたが、今回の治療の影響であることを断定的に説明することは出来ません。しかし、クラシカルオステオパシーの治療理念に基づいて施術を進めていった結果がもたらした今回の現象であることは、紛れもない事実でした。
今回のことで「C型肝炎」について「インターフェロン」について、様々な勉強もさせていただき、さらに別の「C型肝炎」のキャリアの方にも直接会い、現在までの体験談を伺い、今回の患者の血液検査の結果が良化した現象の話もしてみました。その方も我々、オステオパスの治療領域や整骨院の位置づけというものを、快く理解していただいている方ではあるのですが、今回の血液検査の結果については、やはり治療効果と認めることはありませんでした。肝機能の血液検査の数値に関しては体調にも、精神状態にも大きく左右されるし、さらに数値の上下動に関しても、今回の数値レベルでは大した変化ではないと指摘されました。それよりも、今回のような難病の患者が難病を抱えて、普段から自分自身と葛藤している際の健康管理や心のケアをしてあげるのが我々の役割なのではないかとの言葉をいただき、まさに、ご尤もな意見だと感謝しました。今回の出来事は治療家として自分自身の存在意義を改めて感じることが出来た貴重な経験でした。このような経験もクラシカルオステオパシーの治療理念がもたらしてくれた結果だと心より感謝しております。