02
Feb
2019

頻尿

【症例の概要】

患者: 11歳 男子小学6年生

主訴: 週に3~4回のバスケットボールの練習からのオスグッドの治療で来院

経過: 電療及び手技療法の30分程度の間に3回の尿意を催し、トイレに向かう

この状況が連日続き、頻尿の治療を行い始める。

【問診所見】

  • 本人にトイレに行きたくなる症状を聞くと、尿意は催すものの毎回の排尿は無い。
  • どのような場面で尿意を催すのかを本人に聞くと、自宅ではそれほどなく時々、学校ではある。
  • 緊張しているのかを本人に問うと、緊張している認識もなく、緊張しているような 傾向も特別、見受けられない。
  • 本人自体は頻尿だという認識はなく、母親に頻尿に関してのことを聞いても、何ら問題視しておらず、普段も頻尿は無いと母親は答えた。
  • 当初の主訴であるオスグッドの症状は1週間ほどで改善し、炎症症状も消え、通常通りのバスケットボールの練習は出来るまでに至っているが、痛みに対しての不安  から継続通院している。

【生活環境要因】

  • 1人親の家庭で母親と2人暮らしである。
  • 来院時にも親子での小競り合い的な口喧嘩が耐えない。

【理学的所見】

  • 立位、座位ともに前傾姿勢が顕著で、姿勢もうつむき加減で表情もどことなく元気がない。
  • 背部に強い緊張があり、セントラルアーチ付近に強い後彎が感じられた。
  • 腰椎は胸腰椎移行部付近に圧縮間が感じられた
  • 歩行時に仙腸関節及び左右股関節に運動制限があり、重心が右に荷重が偏っている。

【治療経過】

《初検時~1週間 ; 通院頻度 ⇒ 2日に1度》

  • 臥位の時点で力が抜けていない傾向が強かった為、頸部から抑制技法により副交感 神経に働きかけるような治療に専念し、終始、話しかけながらリラックスするように促した。
  • 交感神経過緊張からの横隔膜の動きに制限が感じられ、呼吸も浅くなっている傾向があるので肋間筋及び横隔膜のリリースを図り、呼吸運動の改善と腹腔、胸腔のバランスを整えた。
  • 排尿のオステオパシーセンター集合センターであるL2-3への働きかけとともに腰椎の圧着を開放した。
  • さらに頻尿の治療に有効な正中臍索へのアプローチとして、恥骨結合と臍の間の白線に沿ってリリースを促した。

【考察】

  • 頻尿の原因として物理的な膀胱への圧迫を取り除く力学的な考察からの治療方針と生活環境等からの精神面の緊張が原因で交感神経優位になり、膀胱が無意識に収縮し尿意を催すことを想定した自律神経アプローチを考慮した治療の両面から考察した。膀胱と尿膜をつなぐ管である尿膜管の名残である正中臍索は骨盤の筋膜と横隔膜を 連結する部分であり、この正中臍索の緊張は膀胱の圧迫に繋がり、尿意を催す原因となったとも考えられる。

    脊椎のセントラルアーチ及びダブルアーチが硬くなり、体腔内圧のバランスが崩れ、横隔膜の緊張度は増したものと考えられる。さらに内臓神経反射が障害され、各臓器への血液循環が障害された可能性も考慮に入れ、A-Pライン、P-Aラインの力学線及びセントラルアーチ及びダブルアーチの改善を図った。また内臓の機能低下を防ぐ為、血流低下を起こさせないように血管運動のセンター(表層D2~D4、深層D4~D6)、さらには内蔵循環のセンター(D6~D12)に抑制の技法を施した。

  • 2週間で計6回の治療により、脱力が上手に出来るようになり、表情も明るくなり、元気になってきた。これに伴い、横隔膜の緊張が解け、体腔内圧のバランスが整い、呼吸が安定してきた。さらに、セントラルアーチが安定し、姿勢がよくなってきた。この時期から気が付けば、尿意を催し、トイレに行きたいという言葉は無くなっていた。
Osteopathy治療の症例- 2019/02/02