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03
Feb
2019

パーキンソン病

  1. 患者氏名  Y.T   女性  年齢 72歳
  2. パーキンソン病

    ⇒ (主訴) 手が震え、普段の姿勢で頸部が右斜め前方に傾いていることを家族に指摘され、その姿勢を自ら     正すことが出来ない。歩行時も足がスムーズに運ばない。姿勢保持も不安定。

  3. 平成27年4月頃に軽い脳梗塞を発症し、脳神経外科にて脳内CT及びMRI検査にてパーキンソン病と診断される。
  4. (既往歴)

    ⇒ MRI診断により、頸椎C3及び腰椎L5すべり症の既往を認めるが、特に疼痛もなく症状は見受けられない。

  5. (身体の状態)

    ⇒ 身体の左半身に強い筋固縮が認められる。特に左の胸鎖乳突筋の筋緊張が著明で頸部右側屈右回旋を呈し、立位では前かがみの姿勢となってしまい、姿勢反射障害を認める。

  6. (治療内容及び経過)

    ⇒ 胸郭上口における骨格構造並びに血管分布、神経走行を考慮し、特に胸鎖乳突筋の支配神経である頸神経   及び副神経さらには腕神経叢へのアプローチを念頭にいれ、左右の胸郭上口の前後屈テスト、左右の側屈   テスト、左右の回旋テストを行った。左屈曲(前屈)、左側屈、左回旋の強いバリアに対してストレスを加え、制限ギリギリのところで保持しながら、患者に深呼吸を促してクリープを待った。さらに迷走神経、横隔    神経への抑制も意識しながら胸鎖乳突筋のリリースを促した。治療後、仰臥位においては左頸部の筋膜は   緩解し、左右対称的な状態になったものの、立位になると頸部は元の右側屈、右回旋に若干戻ってしまった。

  7. (オステオパシー的考察)

    ⇒ パーキンソン病とは脳から出る運動指令が筋肉に伝わらなくなり、運動機能が働きづらくなる病気である。 この神経障害のメカニズムの中の軸索輸送のプロセスを阻害している要因を排除することを目的とした治療を考察した。まず神経の細胞体にかかる力学的な圧縮を取り除き、神経の細胞体と軸索間の物質移動を促し神経伝達がスムーズに行われるように心掛けた。これにより筋固縮が緩解し、スムーズな生活動作を取り   戻すことを主眼に治療を行った。

  8. (患者様向け指導管理及び注意事項)

    ⇒ 本症例には振戦、歩行困難、動作緩慢、筋固縮といった四大症状があることを、患者本人とその家族の方にきちんと理解してもらい、ご家族の方は病気を冷静に受け止め、パーキンソン病に関する具体的な知識を   身につけ、適切なサポートをしてもらえるように指導した。さらに日常生活動作においても次第に出来なくなってきていることが多くなることに対して、叱ったり笑ったりといった精神的なストレスを与えないように家族に注意を促した。さらに我々が行う治療だけでなく、患者本人が積極的に身体を動かし、今以上の    身体機能の衰えが進まないように頑張り続けるように患者本人にも指導した。

  9. (本症例に関するコメント)

    ⇒ 日々、日常生活動作が出来なくなってくる自分自身の身体に対し、不安と動揺で苛まれていたところに家族からの一方的な指摘を受け、どうすることも出来なくなり来院してきた患者に対し、この病気の諸症状を   説明し理解してもらい、治療を行った結果、一時的ではあるものの身体機能の改善を目の当たりにすることが出来た。今回の神経細胞に対するアプローチというものが現実的に行えるオステオパシーの優位性を実感することが出来た、素晴らしい治療経験となった一症例でした。