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07
Feb
2019

関節リウマチ (RA)

【症例の概要】

患者氏名Y.S   女性  年齢 54歳

【来院までの経緯】

平成23年4月、左手関節及び左肘関節の疼痛を訴え来院。当時、患者はラケットを使わずに羽根の付いたボールを
手で打ち合うバレーボールタイプのインディアカというスポーツを行っており、その外傷として治療に来ていた。

症状としては、左手関節及び左肘関節に腫脹、熱感といった炎症症状が認められた。

その後、週に1~2回の通院頻度で継続的な身体調整と局所的な治療を施し、炎症は緩和し、一時的には良化するものの再度、インディアカを再開すると特別な受傷機転もなく同様に左手関節及び左肘関節の炎症を伴った疼痛を再発するようになった。

平成24年1月、左手関節及び左肘関節の炎症を伴った疼痛は一進一退を呈し、疼痛出現に至る関節可動域が徐々に悪化してきている傾向が見受けられたので、関節リウマチの可能性を危惧し、朝のこわばりと左右対称性の関節痛の有無を毎回確認したが、その兆候は認められなかった。本人には念の為、内科でのリウマチ検査を一度行うように説明し、受診したものの、リウマチ検査は陰性との診断結果であった。

その後も、週に1~2回の通院頻度で身体調整の継続治療を施し、さらに本人からの意向により当院での鍼灸治療も併用しながら経過観察を行った。

平成27年9月、別の総合病院のリウマチ科にて専門医の診断により、リウマチ診断のスコアリングとは別途の診断にて関節リウマチと診断され、RA専門の投薬治療が始まり、定期的なRA検診を行うこととなった。

【身体の状態:平成27年11月 ~】

平成23年当初の左手関節及び左肘関節に限局した炎症を伴った疼痛症状は、徐々に悪化の一途を辿っている傾向は否めないものの、その進行度合いは6年を経過した現在まで非常に緩やかである。趣味であったスポーツのインディアカは現在、中止しているものの、その他の日常生活や仕事に関しては、なんとか継続出来ている。

また関節リウマチ特有の関節の変形及び筋肉の硬直、腱靭帯の断裂や損傷も全く見受けられず、関節組織や軟骨の   破壊が始まっているような所見は認められなかった。

【治療内容及び経過】

平成27年9月のリウマチ診断を受けた後、RAの継続的な検診及び投薬治療と同時に当院での全身治療である身体調整及び鍼灸治療を継続したい旨を、患者本人からRA専門の主治医に申し出たところ、主治医が快く了承していただき、このまま継続的な治療が行えることとなった。

その後、時折、投薬の副作用からか精神的なストレスなのか、胃の調子が悪く、気持ち悪さを訴える日が多くなった。上記のことを考慮し、身体調整の内容としてはオステオパシーの原則に従い、全身の体液循環の促進と自律神経の バランス調整、及び投薬による肝臓の負担も考慮し、肝臓機能の向上の為の肝臓ポンプ治療や横隔膜の調整といった体腔内圧を考慮した内臓治療を施した。

また、四肢末端の血行障害による冷えや頸肩部の張り感や凝りが気になる日が多くなってきており、血行改善の鍼灸治療も毎回行いながら経過を観察していき、定期的なRA検査の結果も良くなってきており、主治医からも我々の   治療に対し、称賛の言葉もいただけた。

【オステオパシー的考察】

本症例である自己免疫疾患とは本来、我々の身体を守るべき免疫機能が逆に我々の身体を攻撃してしまうといった誤作動を起こす症状である。1度発病したら長く付き合っていかなければならない病気であり、この疾患に対し、オステオパスは何が出来るのであろうかと悩みました。

オステオパシーの原則である「身体は自然治癒力を持つ」といった自然治癒力を免疫力と重ねて考えた場合、生命力の強化の為の治療及び指導を行うことで、その免疫力がさらに身体を攻撃してしまうということを考えると、我々が施す治療は症状を悪化させてしまうのではないかということを真剣に危惧しました。

しかし今回の主治医であるRA専門の医師より局所治療である投薬だけでなく、我々のような東洋医学的な全身治療も必要だという前向きな意見をいただき、我々の役割を再認識することが出来たような気がしました。

患者さん自身に本疾患を正しく理解してもらうことが重要であり、日常生活の中でいかにこの症状を悪化させずに、日々の生活の質を保っていく為の治療及び指導を行っていこうと考えました。

【患者様向け指導管理及び注意事項】

本症例である関節リウマチは適度な運動を毎日継続していくことが大切であり、安静にし過ぎれば関節は固まってしまい、また過度に運動してしまうと炎症が増し症状が悪化してしまうので、運動と安静のバランスが重要である。

また、関節リウマチには健常者よりも疲れやすかったりする傾向があり、だるさや倦怠感が出るということを周囲の人や家族、職場の人に理解してもらうということが、本人の生活の質を保つ為に重要であるということを説明する必要があると思いました。

【本症例に関するコメント】

今回の症例の経過観察を行う過程において、どの時点からまた何をきっかけに自己免疫機能は誤作動を起こし始め、
このような自己免疫疾患というものが発病してしまうのだろうかということを色々と考えました。

私なりに今回の患者に対し、今日までの身体に関する病歴、薬品の内服歴、生活環境、家庭環境、職場環境等々、   
様々な要因を問診した結果、1つ気に掛ったことがありました。それは、薬品の内服歴でした。この患者は離婚歴も
あり、現在は再婚者との生活を送っており、過去には様々な精神的なストレスを感じた場面において、眠れなければ
睡眠薬、さらには安定剤、身体の疼痛に関しては即座に鎮痛剤といった薬品依存の傾向があり、この傾向は現在も
続いているということを、今回の関節リウマチの罹患後に初めて本人より聞くことが出来ました。これらの薬品依存
が免疫機能誤作動の誘発要因となったのではないかと私個人的には思っています。

私の主観的な考え方ですが、薬品の処方に関しては医師の指示に基づくものであり、我々が軽はずみに止める指導は出来ないということは承知しております。

しかし、本症例以外でも薬品の継続的な内服が影響して、思いもよらぬ   病気に罹患し、難治の症状に苦しんでいる患者を何人も目の当たりにしています。

薬品の投与は人間の身体において決して望ましいことではないということを根底に置き、オステオパシーの原則に則ったものの考え方を今後も念頭に入れ、たくさんの患者様を救えるオステオパスとなれるように精進していきたいと思いました。