会社の健康診断で脊柱側弯症と診断され、進行を防ぐための相談にご来院。
【傷病名】
脊柱側弯症 65歳女性
【主訴】
2年前(2017年)の5月、会社の健康診断で脊柱側弯症と診断される。
しかし、本人に疼痛や生活に支障を来たすことが何も無かったため、特別な処置もとらず、そのまま放置していた。
その後、1年以上を経過し、今年の夏に家族より姿勢の傾きを指摘され、背中のラインを見せたところ、あまりにも曲がっていることに家族が驚き、病院受診を促され、整形外科を受診する。XP診断の結果、脊柱側弯症との診断をされるものの、年齢的な理由から手術は勧められず、腰痛があるのであればと鎮痛剤の処方をされるだけで、治療やリハビリ等の施術もなく、普段の生活指導や運動指導もなく、帰らされる。
その後、現在の脊椎の状態よりもさらに進行することを防ぐための手段として何か出来ることはないかという相談のもとご来院。
【初検時の身体の状態】
立位にて背部より視診すると右の肩甲骨は下垂しており、右肩関節から右上腕部は前方に回旋傾向にある。
脊柱の弯曲を背面より視診、触診すると、胸椎~腰椎は左側屈が強く脊椎は右回旋を呈している。
胸椎9番から下部の右の脊柱起立筋及び腰方形筋は後方に膨隆しており、若干の限局性圧痛を認める。
また、仰臥位における左右の脚(下肢)長差は右が約2cm上位であった。
【治療内容と指導管理及び注意事項】
脊柱側弯症の弯曲自体が治療によって変化し、改善するということは無いという前提を説明し、我々の治療によって出来ることは、脊椎の弯曲によって無意識のうちに偏った使い方をして歪んでいる身体の状態(構造、機能、姿勢、日常生活動作等々)を整え、関節の可動域、身体機能の安定性を取り戻すことであるということを理解してもらったうえで治療に入った。
オステオパシーの原則に則り、全身からの統合というマイオゴンの観点から上部Tラインと下部Tラインの極端な変位に対して、骨盤調整から治療に入った。
まずは、胸椎11.12番の力の集合点を境に右肩から左股関節へ向かうクロスラインに掛かる強い張力と捻転力が加わっている右腰方形筋に対し間接法による筋膜リリースを行った。さらに、反対側の左肩から右股関節へ向かうクロスラインには圧縮力が加わっており、拮抗するクロスラインの統合を行った。
次に、強い左側屈右回旋を呈している胸椎及び上部腰椎の横突起に対し、母指球と手掌にてPIRを行い、分節毎の回旋を取り除くように促した。その後、オシレーションにより脊椎全体を統合した。
さらに、強い左側屈の緩和として上部Tラインへのアプローチとして左右の肩甲骨周辺の筋膜リリースも行った。
また、若干の疼痛を訴えていた右腰方形筋に対しては極度の筋膨隆と筋緊張が認められており、この部分に対して、座位及び左側臥位にて間接法及び直接法による筋膜リリースを施した。
【治療経過】
患者様本人には週に1回の通院ペースにて暫くの間、治療を続けて治療経過を見させてもらえるよう促した。
また治療後の身体の状態を毎回、画像撮影させてもらえるようにお願いし、時系列での経過観察をさせてもらえるようにお願いした。
2回目の治療に来てもらった際には治療後の身体の状態が非常に良かったと感じてもらうことが出来、もっと早く来院すれば良かったと安心した様子であった。
また、2回目の治療後の画像を患者様とその家族も一緒に見たところ、身体のラインが明らかに変わってきていることに気が付いてもらえ、このままの状態を維持できればと前向きな声を聞くことが出来た。
【オステオパシー的考察】
脊柱側弯症という物理的にはその変位に対しての修正が不可能な病変に対し、その事実を理解してもらったうえで、現状よりも症状を進行させない為の手段といった患者様からの要望ではあったが、我々の出来ることを上手に説明し、その結果を患者様自身がどのように理解し、身を持って結果に満足してもらえたことにオステオパシーの理念が伝わったと思い、嬉しく思いました。
患者様の身体の状態を的確に診断し、身体が上手く可動したり、機能したり出来るように身体調整し、生活しやすくする為のお手伝いをすることで、患者様自身の身体に本来、備わっている生理機能が正常に働き始め、さらには患者様の運動機能を司る神経伝達機能が活性化し、正常な生活動作が回復できたものと推測できた。
これも、オステオパシーの原理原則に則った診断理論が生んだ結果だと誇らしく思いました。